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正絹の胴裏は必ず黄ばんできます


 弊店は元々は新品のみの呉服店だったのですが、7-8年ほど前からリサイクル着物を扱う ようになり、その面白さからどんどん扱い量が増えていきました。それまでは新品の着 物を展示会などで販売しておりましたが、今ではリサイクル品のネット販売がほとんど のため、朝8時ごろに店に行って、午前中はずっと写真撮影、そのあと商品の発送作業を してまた夕方から写真撮影という流れで動いています。

まあそんなこんなで毎日山ほどの着物を見て撮影しているわけですが、当然しつけ糸つ きの未着用品だけではなく、どちらかというとわずかに衿山にファンデーションがつい ていたりなど、少し汚れているものの方が数としては多くなります。なにぶん一度は消 費者の手元に渡ったものですので、少しは汚れていることが前提になりますが、今日は その中でも胴裏に焦点を当ててお話ししたいと思います。

胴裏とは、一般に袷仕立ての着物の裏地のことで裾の部分の色のついた生地を八掛、胴 の部分の白い生地を胴裏といいます。袖の裏地は「袖裏」とも言いますが、胴裏という 一言で白い部分の裏地全体を指すと思って間違い無いでしょう。ちなみに先ほど白い生 地と書きましたが、例えば汕頭刺繍などのように表地に穴が空いているような刺繍など の場合、白いものをつけてしまうとその穴から白い部分が見えてしまうので、共色のカ ラー胴裏をつけることがありますが、これは少々特殊なケースですのでまた次の機会に。

この胴裏ですが、表地と違って必ず変色します。いや、表地も変色しているとは思いま すが、染料で染められているのでほぼわからないだけで、絹という素材はほぼ間違いな く黄色く変色します。3年や5年程度ではそれほど変色はありませんが、10年、15年と経 つと少しずつクリーム色から茶色に変色していきますが、この変色はあくまでも胴裏の 自然な変色であり、天然素材の照明と思っていただいてもいいぐらい、どの胴裏も変色 していきます。

いや、変色というと少々語弊があるかもしれません。実はもともと胴裏はわずかに黄ば んでいるもので、天然繊維の絹はネット通販屋らしい表現でRGB255(笑)の真っ白とい うことはあり得ません。もともと蚕の繭から撮った絹を精錬し漂白しますが、これにも うひと工程を付け加えるところもあるのです。この工程は私が見学に行ったところだけ なのか、それとも一般的に広く行われているのかはわかりませんが、もともとほんのり と黄ばんでいる絹に反対色の青い蛍光染料を混ぜてそれらの色を打ち消しあって真っ白 にすることもあるようです。 それでもやはり天然繊維、作られてから10年、15年経つと次第に黄ばんでしまいますが、 これを「戻る」ということがあります。

インターネットでもあまりこういう言い方をし ているのを見ませんのでもしかしたら私の周りの業界人だけかもしれませんが、元の色 に戻っていることを指しているんでしょうね。仕入れの現場でも「あー、これはちょっ と戻ってるね」というような感じで使います。ですので、弊店ではよほど真っ白な新品 同様の色でない限り「ごくわずかに黄変しております」と記載しておりますが、あくま でも自然な色の変化ですので少し大目に見ていただけると選択範囲が広がるのではない か、と思います。

たまに真っ茶色に変色しているものがありますがこれは増量剤という薬品が練りこまれ たためと言われています。昔、絹は重さで取引されており、今でも「重め胴裏」などと 記載されるのですが、どこにでもずるい商売をする人はいるものでして、粗悪品の薄い 絹に混ぜることによって重量が重くなる増量剤と言われる薬品を混ぜることがあったの です。この増量剤を混ぜるとあーら不思議、ぺらぺらの絹がずっしりと重い逸品胴裏に なるのですが、やはり元は粗悪品のため絹の変色を引き起こすらしいのです。これは自 分で検証したわけではなく、業界の先輩がおっしゃってることなので半信半疑なのです が(失礼)、まああり得る話だな、とは思います。

ホワイトガード加工に代表されるように、白さを保つ加工もあるようですが、うーん、 すいません。リサイクル品などすでに仕立て上がった着物についてはタグなどはつけら れていないため、ホワイトガードをした胴裏かどうかは全くわからないため、加工がど れだけ有効なのか検証したことがなくなんとも言えません(もしホワイトガード加工の 有効性を証明するようなデータやサイトがありましたらめちゃくちゃ興味があるので教 えていただければ嬉しいです)。

ただ、ホワイトガード加工がされている胴裏と、何も していない胴裏とは価格的にはそれほど変わらないので、誂え時にホワイトガード加工 の胴裏を使って欲しいとお願いしてもそれほど値段のアップはないと思いますので、気 休めか本当に有効かは知りませんが(おい)使ってみるのもいいかもしれません。 というわけで、胴裏は作られてから長い時間が経つと自然に変色していきますので、あ る程度は絹の証明だと思ってその色の変化ごと着物を楽しんでいただけるとリサイクル 着物店としては嬉しく思います。